※ 本記事は 「Board Game Design Advent Calendar 2016」 8日目の記事の後半部分です。
長くなりすぎたので記事を2つに分けました。 → 前の記事
◆新しいシステムを作りたい
ようやくデザインらしい話になってきました。
前の記事でお話したとおり、ビデオゲームは時間というリソースを導入したことで
新しいゲーム性を生み出すことに成功しました。 (異論は認めるっ!)
1フレームというとても細かい制限時間をゲーム内に設けることで、
絶対的な正解を選び取ることを難しくすることで、別の工夫が必要になったのです。
◆もう一度 「時間(フレーム)」 について考える
プレイヤーが処理しきれないこと以外に、何か特徴はないでしょうか?
実はもう1つ特徴があります。それは 「絶対的な数値化が困難」 という点です。
プレイヤーごとに反応速度やゲームの操作スキルなどが異なることで
1フレーム(1ターン)の価値が変化します。*
反応速度が速い人は、1フレーム早く視認できるだけで回避が出来るが 遅い人は、1フレーム早くても回避が出来ない。つまり1フレームだけでは 結果が伴わないため、価値が低いということになります。
そこで、 「判断が難しい、もしくはプレイヤーごとに価値が異なる、数値化できない(しづらい) リソースを
システムに組み込めば新しいゲーム性が成立するのではないか?」 というアプローチをしてみることにしました。
「おぉ、じゃあお前が作ったそのゲームを教えてよ!?」 となると思うのですが、
実はこの模索は今も続いており、まだ実を結んでいません。
ああっ、モノを投げないでください。
ダメじゃん!という突っ込みが多数予想されるので、
他人のふんどしで恐縮なのですが、超有名デザイナーの作品で
こういうことがやりたいんや!というのを説明したいと思います。
ずばり、ウヴェ・ローゼンベルク 様です。
ウヴェ様といえば、「アグリコラ」 が有名ですが、
ここで取り上げるのは 「ボーナンザ」 「パッチワーク」 の2作品です。
◆ボーナンザ
本作の特徴は、「交渉ゲームであること」 「手札のプレイする順番を入れ替えられない」 の2点です。
通常の交渉ゲームは、リソースによる損得勘定が発生するため
どちらかのプレイヤーがやむを得ず、行うことが多いかと思います。
ところがこのゲームはお互いにとても気持ちよく交渉が成立するんです。
その秘密は前述の 「手札のプレイする順番を入れ替えられない」 これによって引き起こされます。
そう、この 「手札プレイ順」 が数値化しづらい新しいリソースなんです!*
厳密な話をすると、カードごとの価値は存在するのですが それよりも手札プレイ順の優先度のほうが大きいバランスになっています。 ガチプレイヤーばかりだとそうもいかないかもですが (笑)
数値化されることでどちらかが損した、という気分になってしまう
ガッチガチの交渉ゲームに、新しいプレイ感を作り出した素晴らしい作品に仕上がっています。
◆ パッチワーク
タイルを取り合いながら、プレイヤーごとに配られている9x9のマスを
出来る限り埋めることが目的です。
自分の盤面によって欲しいタイルが異なるため、獲得可能なタイルに対する
各プレイヤーごとの評価が自然と変わってくる点が面白いところです。
これも 「タイルパズルの形」 と 「自盤面の空きマス状況」 という数値化しづらいリソースです。*
こちらも厳密には付いているボタンの数やマスの数で 強弱はあるのですが、盤面にぴったりとはまるかどうかという点が 大きな判断材料になっていると思います。
2人対戦ゲームは相手をどう邪魔するかが、自分の勝利に直結するため
ともすれば嫌らしい動きをしがちになってしまいます。
それはそれで楽しいんですが、本作は 「タイルの形」 というリソースを追加することで
別のゲームらしさを感じる素晴らしいゲームになっていると思います。
こういう発想のゲームが作りたいんです。
(いや、分不相応なのは分かってるんですけどねw)
◆終わりに
ここまで読んでくださった方、こんな長文で分かりづらい文章にお付き合い頂き、本当にありがとうございます!
本稿ではビデオゲーム好きなアナログゲーマーというちょっと変わった視点で
理想のゲームシステムを言語化してみました。
他にもこういうゲーム、システムが理想的。という想いは多くあるので
実現に向けてちまちまと活動していきたいと思います。
ご意見、ご感想など Twitter や、お問い合わせフォーム からいただけますと嬉しいです。
明日(12/9)は 鷹海和秀(まどりや) さんです。どんな内容になるのかこれから楽しみです ^^
最後になりましたが、毎年本企画を主催してくださる I was game さまと (毎年拝読しております)
読者の皆様に感謝いたします。
「ありがとう、そしてありがとう!」