ゲーム制作における3つの着想方法 (後編)

 

※ 本記事は 「Board Game Design Advent Calendar 2019」 7日目の記事の後編です。

本記事は2部構成になっています ⇒  前編 ・ 後編 (本ページ)


 

③ 模倣と抽象化

◆模倣

① で紹介した 「分解と再構築」 と似ていますが、楽しいの要素の選択方法が異なります。

自分のストックからではなく、対象となる行為から発想を行います。

ボードゲームの制作で言うと、テーマからの発想 に近いです。

 

先の例で示した 「通学通勤の最適化」 をゲームにしようとした場合

現実に即した内容をヒントに着想を得るという手法です。

例えば、電車のほかにもバス、自転車、徒歩などがあるので

ルートごとのコストやかかる時間、さらにはスタート地点を設定し

これをゲーム化できないか?というような発想。

 

スタート地点は都心部であれば毎ラウンドの維持コストが高い(家賃が高い)が

移動時間が短縮できる。というようなイメージです。

 

この発想方法の優れている点は 「ルールが直感的に理解しやすいこと」 につきます。

上の例ほど直接的でなくても、一般的な物理法則などに則ったルールであれば

プレイヤーのルール理解を強力にサポートできます。

(例: 重いものを運ぶのは大変 など)

 

◆抽象化と転化

直接的な発想ではなく、少しだけ捻るやり方です。

 

例えば・・・

 ・「通勤通学の最適化」 って結局なんだっけ?

  ⇒ あるものを輸送するための各リソースの最適化

  ⇒ リソース: 時間・コスト ⇒ ルート・運搬方法の選択に依存

 

 ・ということは大航海時代に商人が黒胡椒をどう運んで売りさばくかみたいなゲームに出来ないか?

  ⇒ どの駅のホームで、何号車に乗る?

  ⇒ 言い換えると、 どの港でどの船に乗せる?ガレー船は速いけど近距離のみとかに転化できない?

 

というように、ピックアンドデリバリーっぽいゲームに、フロー最適化の要素を加えることが出来そうな気がする?

シチュエーションを変えるとまた新たなアイデアが浮かんできます。

 

例えば・・・

 人身事故で遅延 だとルート選択に制限がかかるという機能になりますが

 海賊に襲われて積荷を奪われた、というようなアイデアであれば運搬するものに関する機能になります。

 電車で人がさらわれるなんてそんなに無いことなので、電車フレーバーの段階では思いつき辛いですよね。

 


実例紹介: たまもーる の着想

これまで紹介した3つの発想を並行して行ってゲーム作りを行っています。

例として2作目であるたまもーるの簡単なメイキングプロセスを記します。

 

ゲーム内容についてはある程度知っているものとして話を進めます。

お手数ですが不明点は 作品紹介ページルール紹介ページ をご覧ください。

 

◆超簡易ルール紹介

2vs2の強力ゲームで、カードプレイにより場にあるカードを動かし

自チームにマイナスのカードが来ることを避けるようにすることが目的

 

◆発想の初期段階

某ゲームの爆弾を押し付けあうミニゲームを見たことが最初の発想です。

超マニアックな話なのですが、某ゲームというのはヴァンパイアセイヴァーのレイレイという
キャラクターが使う技である 中華弾 というものです。

これの楽しさはなんだろう?というのをまずは分析しました。

ざっと挙げると以下のような項目です。

 

 ・ 嫌なものをお互いに押し付けあう感覚

 ・ 爆弾が爆発しそうになったときのドキドキ感

 ・ 相手にうまく押し付けたときのしてやったり感

 

爆弾が爆発するかどうかが分かったほうがドキドキするかと思い

爆弾タイマーを表示したのですが、逆にゲーム序盤の緊張感が無くなってしまった。

 

加えて自分のところに爆弾が回ってくるのをコントロールできず

納得感が無いゲームになってしまった。

 

◆課題の解決

上記の課題を解決することを考えた経緯

 

爆弾発動条件: タイマー制

 ⇒ ドキドキはするが、ゲームの緊張感が失われるので没

 ⇒ 別の条件で発動するように変更、条件については課題が残った

 

コントロール感: チーム戦を導入

 ⇒ 味方を助けるという消極的なコントロールで、運要素とコントロール要素を同時に追加

 ⇒ ゲーム内での成功体験と一体感など別の楽しさが生まれる

 ⇒ 課題として残っていた発動条件について、自分のターン開始時とすることで解決。チーム戦との相性がバツグン

 

本当は途中にもっと多くのテストを繰り返しているのですが、

おおよその流れはこんな感じです。

 

爆弾ではなく、フコウノトリ というフレーバーを追加したことで

速度が違う、逆回りに回る、などといった生態的な特徴を生かしたルールも追加することが出来ました。

 


 

というわけで、自分なりのゲームデザイン方法について簡単に紹介してみました。

他にも色々やってるんですが、言語化しづらいことが多くひとまず表層の部分をと思った次第です。

今回の記事は Studio GG のShun さんの一言が執筆するきっかけでした。この場を借りて御礼申し上げます。

 

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梟老堂 ではこうした開発で楽しいゲームを沢山作っているので

機会があれば是非遊んでみて下さい!

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どこかでゲームを通してお会い出来ることを楽しみにしています。