ゲーム制作における3つの着想方法 (前編)

※ 本記事は 「Board Game Design Advent Calendar 2019」 7日目の記事です。

まず初めに 本記事の内容はあくまで主観であり、厳密な調査などを行ったものではありません

そのため極端な意見や、ともすれば間違いもあるかもしれませんがどうか大目に見てやってください。

 

また、文中には耳慣れない言葉を自分解釈で使っている部分が多々あります。

ここ意味不明で分からん!という場合はお手数ですが

Twitter などでお問い合わせ頂ければ幸いです。

間違いなどを見つけた場合もこっそり教えて頂けると嬉しいです。


記事は2部構成になっています ⇒  前編(本ページ) ・ 後編


◆前置き

初めまして、梟老堂 というサークルでゲームを作っている、福夕郎と申します。

2018年に続いて ゲームに関する雑感を明文化しようという試みです。

 

本稿の目的は以下の通りです。

筆者自身のゲームを制作する際のプロセスやきっかけを分類、明文化することで

読者の方のゲーム制作の一助になる (…といいな)

この灰色背景のボックスには、補足情報や筆者の独白を掲載しています。
読み飛ばして頂いても構いませんが、読んでもらえると喜びます。

① 分解と再構築

◆楽しいの分解

既存の事象(ゲームに限らない) において、自分が楽しいと感じたことや

それ以外のことでも、項目ごとに分解・抽象化を行います。

上記で 「ゲームに限らない」 としたのは、日常の生活でもゲームっぽいことって

沢山あると思っているからです。

 

ここで得た楽しいと感じたことの本質を自分の中に沢山ストックしておきます。

記憶力に頼るのは無理があるので、メモに残すようにしています。

以前はEvernoteを使っていたんですが、最近使い辛くなってきたので
Google スプレッドシートに移行してます。
後で見ても分かるように書いているつもりですが、意味不明なことも沢山…
書き方には工夫が必要です(笑)

 

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分かりにくいので1つ例を示します。

 

分解の例:通学通勤の最適化

例えば自分が学校や会社に電車で毎朝通っているとします。

単なる作業じゃ勿体無いので、私は以下のようなことをして遊んで(?)います。

乗り換えが1回必要な場合に、何号車に乗って、何口から乗り換えれば移動距離が短いかのルートを確立する。

また、自身の寝坊や電車の遅延などで時間がずれた場合の善後策などのバックアッププランを用意する。

 

これの何が楽しいと思っているか?

 ⇒ 事前に与えられたリソースや手段をうまく組み合わせるのが楽しい

 ⇒ ゲームで言うところのアクション選択型に近く、最適解を探すことが楽しい

 ⇒ 更にイレギュラーなことが起こった場合は、対応力も要求されるので、ローグライク的な楽しさもちょっとだけある。

 

・・・とまぁこんな感じです。伝わりますでしょうか・・・?

本当はもうちょっとそれぞれの楽しさを細分化しているのですがあくまで概要ということで。

これが楽しいといっても、メチャクチャ楽しいハァハァ
って訳じゃなくて、どうせだからやってみるかー程度の話です。
こういうの全部計算してかっちりやらないとダメな怖い人って訳じゃないのでご安心下さい

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それぞれの事象は複数の楽しさの融合体であることもあるため

分解する際も、1つの案だけでなく複数の案を考えます。

 

更に 自分以外のタイプの人間であればどうか? という視点でも考えるようにしています。

(こればっかりは限界があるので仮説止まりではありますが…)

 

 

◆楽しいの再構築

自分が感じた楽しさと同質のものを、ゲーム上で再現することを試みます。

どういった形で再現するか、採用するメカニクス・ギミックなどを吟味します。

この際それぞれの項目について、自分なりに理解し特徴や Pro/Con を理解しておく必要があります。
BGGに登録されているような代表的メカニクスについては、自分なりに体系化しています。
また、単体では機能するものでも、組み合わせるとうまく行かないものがあるので注意が必要です。
組み合わせの話は、去年執筆した 「ランダマイザに関する考察」 でも語りたかったのですが、書ききれていません

この項目も説明するのがとても難しいのですが、

上で明文化した 「楽しさの本質が何か?」 について仮説ごとに色々な組み合わせを試します。

 

私がよく行っているのは自分が好きなビデオゲームの楽しさの再構築です。

アナログゲームと違う部分も多いのですが、本質的な楽しさの部分は共通するものが多いためとても参考になります。

実現方法もビデオゲーム的な手法が多いため、再構築した場合に違ったものを制作しやすいというメリットもあります。

具体的なやり方は後編でお話します。

 

◆ビデオゲームの分解例 (Left4Dead)

殴り書きで字が汚いですがこんな感じのことをしてます。

メチャクチャ楽しい4人協力FPSの面白さってなんだろう?ってのを考察したものです。

こういうのを沢山書いてストックするようにしています。

 


② 課題解決(既存メカニクスの改良)

◆メカニクスのPro/Con 作成

これまで遊んだことがあるゲームで不満に思っていることを解決しようというアプローチです。

よくある奴なので、特に説明は不要かと思いますが自分が気をつけていることを以下に列挙します。

 

・不満点を解決するために、本来の良さがなくならないように気をつける

 自分もよく陥りがちなことです。これを避けるためにも不満点だけでなく好きな点についても

 しっかりと初期段階で分析することが重要です。

 この際、自分だけでは分からない場合が多いので(自分は不満を持っているのだから当然なのですが…)

 そのメカニクスを好きな知人に色々と話を聞いてみることも重要です。

 

・メカニクスが持つランダマイザ要素の度合いを見極める

 どの粒度でメカニクスを語るかにもよるのですが、運要素の度合いでミスマッチが起こらないように留意します。

 例えば将棋で相手のコマを取った際に、そのまま取るのではなくサイコロで大きい目が出たほうが取る

 というようなルール追加はミスマッチです。

 

例: ドラフトシステムに関する考察

ドラフトの良いところ

イアルへの道 というドラフトゲームを制作した際の考察ノートをお見せできる形にしたものです。

Con の部分は出来ているのですが、Pro の部分はお見せできる形になっていないですが…

(スプレッドシートのメモしかないです)

 

◆ 課題の解決

こうして挙げた要素を整理し、解決するための手段を探します。

大抵の場合は既存メカニクスとのマッシュアップを試すことで解決しますが

中には紆余曲折のあと、原型を留めないようなものもあります。

 

例:オツカイフクロウの苦労話

本作は奉行問題が無い協力ゲームを作ろうと様々なメカニクスを採用しているうちに

トリックテイキング側の主張が強くなって、協力トリテ という風に見えるようになってしまった。

詳細は梟老堂が出版しているトリックテイキング紹介本 「Trick10King」 を見てね!(露骨宣伝)

 


後編へ続く

ゲーム制作における3つの着想方法 (後編)