(2019/05/23 追記)
※ 本記事は 「Board Game Design Advent Calendar 2018」 14日目の記事です。
まず初めに 本記事の内容はあくまで主観であり、厳密な調査などを行ったものではありません。
そのため極端な意見や、ともすれば間違いもあるかもしれませんが、どうか大目に見てやってください。
去年に続いて長文かつ、キャッチーさはかけらもありません(苦笑)
読む人が居るのか?って内容ですが、 それでもいいよって方だけお付き合いください。
なお、間違いなど見つけた場合は Twitter などでこっそり教えて頂けると嬉しいです。こっそり修正します。^^;
以上、前置き(去年のコピペ)でした。
記事は3部構成になっています ⇒ Vol.「1」(本ページ) Vol.「2」 Vol.「3」
◆前置き
初めまして、梟老堂 というサークルでゲームを作っている、福夕郎と申します。
2017年に続いて ゲームに関する雑感を明文化しようという試みです。
本稿は、以下の3点を行うことでゲーム制作において、
「制作しているゲームにどういったランダマイザを採用すべきか」 という指針の一助になることを目指します。
個人的に普段考えていることを明文化することで、皆様の思考整理の一助になれば幸いです。
◆ランダマイザって何?
本稿の題名にもなっている 「ランダマイザ」 という言葉。
日常生活では馴染みがない言葉なので、まずはじめに言葉の説明をしたいと思います。
この灰色背景のボックスには、補足情報や筆者の独白を掲載しています。 読み飛ばして頂いても構いませんが、読んでもらえると喜びます。
元々の語源(?) は英語の ”randomizer” という言葉です。
意味は 「乱数器」 「無作為抽出」 といった意味です。
つまり言い換えると 「なんらかの入力に対して、ある範囲から無作為に出力を抽出する」 装置のことです。
某悪魔召喚ゲームの魔法名ではないです。 ちなみに私はそっちのほうを先に知ってしまった人です。メギドラオン!
文字による定義だけでは分かり辛いので、実例を挙げてみましょう。
例1: サイコロ (6面体)
入力: サイコロを振るという行為
出力: 1~6の数字を同じ確率(6面体の場合は各1/6)で選択する
例2: ルーレット
入力: ルーレットに鉄球を投入して回すという行為
出力: 1~36(+00) の数値のいずれか1つを選択する
randomizer なら、どちらかというと ランダマイザー って最後伸ばす気がするんですよね。 ここにもJIS規格の魔の手が伸びているのでしょうか…?
こういったものをランダマイザと呼びます。イメージなんとなくつきました…?
◆ゲームにおけるランダマイザの役割
ゲームをゲームたらしめているもの、それこそがランダマイザです。(※1)
プレイヤーは多くのランダム性の中でどうすればそのゲームに勝利できるかを考え、
自らの行動を選択し、最終的にランダム性が味方してくれると願いながら、勝利しようとゲームをプレイします。
※1 ゲームの定義によるので、多分に誤解を招くことを承知で記載している表現です。 あくまで執筆者自身がゲームの楽しさとして感じている部分であって、個人差がありますが 本稿がどういう人間が執筆しているのかをはっきりさせるために記載しました。
もちろんゲームの中にはランダマイザが少ない (あるいは全く無い) ものもありますが、
そういったゲームはパズル要素が非常に強くなります。 俗に言うガチゲーって奴はこれにあたります。
例えば将棋なんかはこちら側ですね。ランダム要素は 「先手・後手」 の部分だけです。
※2 ランダム性が低いゲームの楽しみ方、 ゲームに対する事前の理解度や、解析能力(最善手を捜す能力)に大きく依存するため 気軽に楽しむゲームというよりはスポーツのようにストイックに楽しむものになる傾向があります。 自分はそういったタイプのゲームも好きではあるのですが、 楽しさの種類が全く違うと考えています。
話をランダマイザに戻しましょう。ゲームにおけるランダマイザの役割は主に3つと考えています。
いずれもゲームを楽しく遊びやすく、楽しくするための工夫と理解しています。
◆ランダマイザの分類軸 ① : 試行回数と確率変化
先人達の知恵のおかげでこれまで沢山のランダマイザが考案されてきました。
細かく分類すれば沢山の種類があるのですが、
まずは 「試行回数による確率変化の有無」 に沿って分類します。
個人的にはこの項目が一番大きな違いだと思っている かつ、意識されていないことをまま見かけるからです。
上では小難しく書きましたが、実はみなさん中学生のころに数学の時間に習っているハズです。
こんな問題を見たことありませんか?
袋に色付きの玉が合計6個入っていて、それぞれの個数は赤色の玉(赤玉)3個、白色の玉(白玉)3個です。
赤玉を取り出す確率はいくつでしょうか?
なーんてな問題です。この場合、6個中3個が赤玉なので
3/6=1/2 となり、二分の一の確率で赤玉を取り出すことになります。
では、続けて2回以上玉を取り出す場合はどうでしょうか?
この場合、1回目に取り出した玉を袋に戻すか、戻さないか、で確率は変わってきます。
そうなんです、この 「戻す or 戻さない」 が 「試行回数による確率の変化」 なのです。
◆分類軸① の具体例 (2019/5/23 時点)
◆確率が変化しない
・ダイス (何面体かによってそれぞれの確率は変化)
・コイントス
・ルーレット
例: ルーレットの出目と当選倍率
ルーレットの出目確率は常に一定のため、
出目を当てたときの倍率も明確に決めることが出来るため
ギャンブルとしてとても分かりやすい。
⇒ 1/36 の出目を当てた場合は、コインが36倍になって帰ってくる。
◆確率が変化するもの
・カードドロー (デッキから)
・くじ引き (袋からとって戻さないタイプ、一番くじみたいなの)
・カード公開 (坊主めくり系)
例: 黒ヒゲ危機一髪
剣が刺さっている本数が増えるに従って、黒ヒゲが飛ぶ確率が高くなっていく。
飛んだら負け、勝ちの場合どちらにおいても、ゲームが進行するにつれてドキドキ感が高まっていく。
◆ランダマイザの分類軸 ① をどう活かすか
ゲーム制作時、なんらかのランダマイザを採用しようとした際
どれを採用するかの判断軸になります。
【確率変化無し】
言い換えると 「同じ確率でランダム性を複数回試行可能」 ということ。
ゲーム中常に同じ確率を維持するため、基幹システムに組み込みやすい。
【確率変化あり】
試行回数を一つのパラメタとして、確率を制御できる。
例えば 「試行回数 ≒ ゲームの進行度」 というタイプのゲームでは
ゲームの収束性を高める仕組みとして活用できる。
先の黒ヒゲ危機一髪は良い例。
残りの穴が減る=ゲームが終わる可能性が高くなっていく。
全部の穴に剣を刺せば、絶対にゲームが終わるとも言い換えられる。
◆ランダマイザの分類軸 ② : 確率分布
ランダマイザによって、それぞれのパラメタが引き当てられる確率が異なります。
これも難しい言い方してるだけで、よくあるサイコロ(6面)だと
1.2.3.4.5.6. それぞれの出目が出る確率は1/6だよってことです。
↓一応念の為、よくあるサイコロ(6面)ってのはコレのことです↓
初めてTRPGを知ったとき、世の中にはこんなに多くの種類のサイコロがあるのかっ! と驚愕しました。4面、8面なんてのも当たり前だし。一体何に使うんだよ100面サイコロって… (そして後に使い道があることも知るというw)
◆ランダマイザの分類軸 ② : 確率の分布 どこからが運ゲー?
確率の大小によって、得られるパラメタの期待値が違うのでプレイヤーの感じ方が変わってきます。
例を挙げると…
6面ダイスであれば、1が出て欲しいときに 「出ろー!」 と願いながら振ることが出来るけど
100面ダイスだと 「どうせ出ないっしょ?」 と思いながら振る。
とこんな感じです。これは感情部分のお話で、どこからは確率が低いと感じるかは
人それぞれなので、定義が非常に難しいです。
それぞれ自分の感覚と照らし合わせてすり合わせるしかないのかなと思っています。
俺は100面対ダイスでも思い通りの目を引ける運を持っているぜ! って感じる人も居るかもしれない。ってこと。 さすがに無理だと思うけど、そういう強運持ちも居るのかもしれない。
トランプのカードも同じようなことがいえます。
52枚のカードから 「スペードのエース」 を引け、と言われたら難しいが
「黒のカード」 を引けといわれたら、1/2なのでワンチャンいけるのでは?と思える。
◆ランダマイザの分類軸 ② : 確率分布をどう活かすか
作っているゲームのデザインに合わせて、運と戦略のバランスを考えるときに留意します。
これは確率分布だけでなく、その他項目と複雑な相互作用の元に決まることなので
詳細は後述します。
◆ランダマイザの分類軸 ③ : パラメタの範囲
ランダマイザを試行した後に得られるパラメタが他のものと差がどれぐらいあるか。ということ。
通常の6面ダイスには 1~6の数値が書いてありますが、別に順番に書いてある必要はなく
「0, 0, 0, 1, 2, 100000」 なんてのでも良いのです。
そして例えばこのサイコロですごろくをプレイしたら、 100000 の目を出した人が勝つゲームになってしまいます。
すごろくはサイコロの出目に一喜一憂しながらコマを進めるのが楽しいゲーム
なのに、1度振ったサイコロが 100000 かそれ以外かを楽しむゲームになってしまうとミスマッチです。
上記は悪い例ですが、良い使い方もあります。
宝くじのように1等がとても希少であればあたったときにすごい嬉しいというような使い方です。
この場合、低確率にも関わらず引き当てたことに対する相応の対価が必要です。
この対価の設定を間違えると、それはそれで悪い例になってしまいます。
◆ 本記事(Vol.1)のまとめ
ランダマイザを3つの軸から分析することで、
採用すべきランダマイザを考えることが出来ます。
-
確率変化の有無 ⇒ 収束性が必要か?
-
確率分布 ⇒ どれかが出やすいほうがいい?
-
出力パラメタの範囲 ⇒ 広い=運要素大?
次ページ (Vol.2) で 「ランダマイザと意思決定の順序に関する考察」 を行います。
ゲーム全体のフローにおいて、どこでランダマイザを採用すべきか、
について議論したいと思います。